NASA JPL チーム CoSTAR

米国国防高等研究計画局が主催する「地下チャレンジ(Subterranean Challenge)」は、ロボット システムの自律性を向上させ、地球やその他の惑星にある地下環境を迅速に探査することを目的としています。このコンテストは、軍事、民間、政府機関向けの最先端の研究を加速させることを目指しています。このコンテストで優勝するには、参加チームは惑星探査と地上用途 (坑道、洞窟、または自然災害後の捜索・救助活動など) の両方に焦点を合わせながら、地下空洞を探査するための完全に自律的なシステムを開発する必要があります。

CoSTAR チームは、NASA ジェット推進研究所 (JPL)、マサチューセッツ工科大学 (MIT)、カリフォルニア工科大学 (Caltech)、韓国科学技術院 (KAIST)、スウェーデンのルレオ工科大学 (LTR) の間で構成された共同チームです。世界中の 60 人のエンジニアからなる CoSTAR は、米国国防高等研究計画局 (DARPA) の 3 年間にわたる 4 部構成の「地下チャレンジ」に参加している 10 チームの 1 つです。このチャレンジは「トンネル サーキット」、「市街地サーキット」、「洞窟サーキット」の 3 つのサーキットで構成され、その後に 3 つの環境すべてを組み込んだ「ファイナル イベント」が続きます。優勝チームには、将来の研究プロジェクト資金として 200 万ドルが授与されます。CoSTAR チームは「トンネル サーキット」を 2 位、「市街地サーキット」を 1 位で通過しており、本書執筆時点では「洞窟サーキット」と「ファイナル イベント」に向けて取り組んでいるところでした。

サーキットごとに地形は大きく異なります。起伏の多い地形が設定されているものや、暗い場所があるもの、さらには階段が含まれているものもあります。自律型ロボットは、劣悪な条件でも通り抜けることができなければなりません。劣悪な条件では、テスト中に転倒して重要な部品が破損することもよくあります。CoSTAR チームは、衝撃に強い軽量な自律型システムを事前に準備する必要があっただけでなく、壊れた部品を現場で迅速にメンテナンスし、レースの合間に迅速に設計を練り直し、相手チームに先んじる必要がありました。現場で部品が故障した場合、CoSTAR がサーキットを完走できなくなる可能性があります。チームはたびたび未知の世界に入り込み、迅速に対応するためのツールを必要としています。

チームは Boston Dynamics 社と協力し、コンテスト用にいくつかの Spot ロボットの貸し出しを受けています。CoSTAR のエンジニアと設計者は、Spot がサーキットを無事に完走できるように、ブラケットやエンクロージャなどの追加コンポーネントを迅速に設計して製作する必要がありました。以前は、木材、工作機械、レーザーカッターなどを使用して部品を製作していましたが、相手チームに先んじるために別の選択肢が必要であることに彼らは気付いていました。3D プリントは、必要に応じて迅速に部品を繰り返し造形し、修正していくための完璧なソリューションでした。このニーズに対応するために、チームはシンプルな PLA 3D プリンターを導入しました。しかしそのプリンターでは、最終的な製品ではなく、試作品として使うことができる部品しかプリントできませんでした。それらの部品には基本的に、十分な強度がなく、重要な部品が損傷する可能性がある不確実な地形に入るロボットに取り付けて現場に送り出すことができなかったのです。重要な部品の一例として、ロボットの上部に取り付けられた高価な LiDAR センサーがあります。この部品は何があっても保護する必要があります。この部品を保護するために使用される材料は、センサーから使用可能な有効出力を送信できるように、優れた剛性と振動減衰特性を備えている必要があります。また、チームは、PLA 3D プリンターでは表面仕上げの質が低く、不正確な部品しか製造できないことにも気付きました。そのため、プリント後に部品の研磨に非常に多くの時間を費やしていました。彼らは、時間のかかる後処理の煩わしさがなく、設計の試作品を迅速に作成し、テスト後には製品レベルの部品をプリントすることができ、現場に持ち込むことができる堅牢なシステムを必要としていました。

幸いなことに、チームは Markforged 3D プリンターを利用することができました。CoSTAR チームには JPL で働くメンバーも数人いるため、チームは Markforged 3D プリンターと強力なクラウド コネクテッド Eiger ソフトウェアを使用すれば、形状の制約なしに実際に機能する軽量で強力な部品を製造できるという知識を既に持っていました。チームは、Markforged がすべての要件を達成するための強力な選択肢であることに気付きました。また、Markforged プラットフォームでプリントしたブラケットやマウントの方が、アルミニウム製のものよりも優れ、はるかに軽量であることにも気付きました。その上、Markforged プリンターで 3D プリントした部品は、衝撃を受けても故障することなく再利用することができました。チームは、所有する何台もの Markforged 3D プリンターと連続炭素繊維強化材を使用して、7,000 ドルの LiDAR センサーを保護するケージを 3D プリントしました。その部品は数回の衝撃を受けましたが、LiDAR センサーが損傷することはありませんでした。

コンテスト期間中、チームは Markforged パートナーである GovSmart 社の助けを借りて、所有している Markforged プリンターの数を 1 台から 3 台に増やしました。さらに Markforged が 2020 年にチームのスポンサーとなり、4 台目のプリンターを提供しました。CoSTAR チームは、最初の 2 つのチャレンジにこれらのプリンターを持ち込み、ホテルの部屋に数台を設置して、翌日にフィールドで使用する部品を一晩で製造しました。チームにとって、3D プリンターへの信頼は非常に重要でした。彼らは、翌朝テストして組み込むことができることを期待して、夜遅くまで部品の設計に取り組むことが多かったからです。幸いなことに、彼らが所有する Mark Two 3D プリンターは高品質の製品しか製造しませんでした。

プリンターの堅牢性、製造された部品の信頼性と再現性、そして後処理を必要とせず、実際に機能する美しい部品をThe Digital Forge が製造できるという事実こそ、Markforged が理想的な積層造形技術であると言われる理由です。

DARPAが主催する「地下チャレンジ」は、一部の人にとっては単なるコンテストかもしれませんが、CoSTARにとってはそれをはるかに超えています。彼らにとって、この挑戦は、月や火星での、さらには土星や木星のいくつかの衛星での地下探査を可能にするための出発点にすぎません。チームは、コンテストに必要なロボット機能を構築することにより、地下環境を探査し、生命の発生や、他の惑星における生命の有無、また将来人間が居住できる可能性があるかどうかを調べる将来のNASA JPLミッションを可能にしたいと願っています。そして、積層造形技術は、彼らが新しい技術によってそれらを実現できることを証明するのに役立っています。

Markforged は、CoSTAR チームのサプライヤーおよびスポンサーであることを誇りに思っています。